高等ムーミンをめぐる冒険

趣味は生物学とクラリネットです。つぶやき:@NobuKoba1988

響け!ユーフォニアム 公式吹奏楽コンサート ~北宇治高校吹奏楽部 第3回定期演奏会~

月始めに『ジャック・ランスロ国際クラリネットコンクール』でという奴で横須賀芸術劇場に行ったばかりであるが、月末になって今度は響けユーフォニアム定期演奏会で横須賀に行ってきた。

台風が接近していたために夜公演はクリスマス・イヴに延期となっていた。幸いにも私は昼のチケットを取っていたのでどうにかなった。まぁクリスマスに予定がある訳ではないんだが…

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前回行った時は普通のコンサート会場って感じだったが、今回は駅を降りた瞬間からオタの瘴気を感じた。アニメ系イベントにはほとんど行かないので身構えてしまう。

座席は一階席最前列から2列目の中央付近と、コンサート的にはイマイチな配置であった。

でも声優さん(レイナを除く北宇治カルテットの3人)やTRUEさんの様子を数メートル以内から見られたのは新鮮であった。声オタではないのでそんな興奮する訳ではないけど、中の人を間近で見ると感慨深いものがある。

2千円のパンフレットを買わないと曲目すら貰えない仕様。まぁ買うんですけどね。物販は異常に混んでいたが開演前になんとか買えて、おまけに気づいたら新作映画のムビチケ+クリアファイル4枚セット(6千円)もついでに購入していた。やれやれ。

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演奏は洗足だけあってさすがに上手い。クラのTosca吹いてるトップの人が楽しそうでよかった。音も好き。

響ユの曲はソロをフィーチャーし過ぎた楽曲ばかりなので、ソリストの皆さんが大変そうでした。三日月の舞もリズも難易度の割に演奏効果が低い気がするので、私もやってはみたいものの、へたっぴな団体は手を出せないですね…。

で、今回個人的にメインであった『リズと青い鳥』全楽章ですが、オーボエソロ来るかぁ!と身構えていたらなんと2楽章と3楽章の間におちゃらけ声優トークが挟まってしまった。リズと青い鳥は非常に好きな作品であり曲でもあるのでこれには興ざめ…構成を考えた人の問題だと思うけれど、4楽章通して一つの作品なので、宇治公演やクリスマスイブには改善してあげて欲しい点である。

それ以外はとても良かったです。楽譜が欲しい。

第4回ジャック・ランスロ国際クラリネットコンクール

先日、横須賀芸術劇場で行われたジャック・ランスロ国際クラリネットコンクールの審査員コンサートに行った。

ミシェル・アリニョン、フィリップ・ベローを始めとした豪華メンバーが色々演奏してくれて、しかも無料ときたもんだ。

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肝心のコンクールの方も無料公開されているので行きたかったが、平日は厳しかった。

付近に住んでる中高生なんかにはまたとないイベントなので、今後日本で開催されたら行くといい。

会場では各メーカーのブースの他、浜中浩一氏が愛用したクラリネットが販売されていたりした。

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記念グッズとしてTシャツが売っていて、クラリネットのグッズというのは少ないので思わず購入。

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黒いのが今年のもので、白いのは2014年だかの売れ残りが投げ売りされてたもので、素材やデザインの配置なんかが違った。

とにかくクラリネットマニアの人にはたまらない行事だったのでおススメです。機会があれば本選も聴きたかったな。

 

恐怖のスワブ詰まり

高校の時からクラリネットを吹いてきて、何度も管体にスワブが詰まりそうな気配を感じることがあったが、その度に間一髪でくぐり抜けてきた。

ところが先日ついにスワブが詰まって抜けなくなった。

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とある日曜日に大学の先輩にあたる人に誘われて、横浜市内の某所で練習を始めてわずか30分後の出来事だった。

絶対そんな訳ないと現実を否定しつつ、しかし全く抜ける気配がなく、むしろ状況が悪化している感じすらあったため、止むを得ず練習を取りやめ帰路に着いた。

どうにかして自力で取れないものだろうか。何か道具さえあれば…。

ラジオペンチで引き抜こうとするも、スワブの繊維を引きちぎるばかりで効果がない。

その後、平日は研究室に引きこもっているため放置していたのだが、夢にまでスワブの詰まったクラリネットが登場し始めた。

グーグル先生に尋ねると、やはり最終的には楽器屋に頼るしかない。下手に力をかけてキーが曲がったり内部を損傷したらそれこそ悲劇である。

そんな訳で、次の週の日曜日、重い腰を上げて東神奈川の某楽器屋に持ち込んで修理してもらった。

幸いすぐに手をつけてくれて、5分も経たずにスワブを取り除いてくれた。プロのリペアマンて本当にすごい。僕はあらためてそう思った。

なお、スワブ自体は引き裂かれて使い物にならなくなった。先日カラオケに忘れて一つ消滅していたので、持っていたクランポンスワブをすべて失った。

そこで帰りにその楽器屋でヤマハスワブを買った。逆方向から引っ張る用のヒモは付いてないがクランポンよりも布が上質な感じがし、実際スルスルと通る。値段もクランポンのそれよりだいぶ安い。昔のヤマハスワブはダサさの極みだったが、近年のモデルは良いことが分かった。

気になる修理代は千円ポッキリであった。

結論としては、スワブ詰まりなど自力でどうにか出来そうな気がしてしまうけれども、プロに任せたらあっという間に取ってくれるし、色々試行錯誤したり憂いてる暇があったらとっとと楽器屋に行くと良いという事である。

リペアのお姉さんにスワブが取れなくなったと告げた時は相当の屈辱を感じたが、帰りの道中は新しいパンツをはいた正月元旦の朝のように爽やかな気分であった。

 

ゾンビ遺伝子が象の癌を抑制する

 異なる生物でも細胞のサイズはそんなに変わらないため、体のサイズが大きい生物ほど細胞数が多い。すなわち細胞分裂が多くなるため、癌化の危険性が上昇すると考えられるが、実際には象などの巨大な生物で癌の発生は少ない(Petoのパラドックス)。
 その理由の一つとして人類には1コピーしかない転写因子p53が象では20コピーもあることが分かっている。
 今回Cell reportsに出た論文では、ヒトでは1コピーしかない白血病阻止因子(LIF)のオルソログが象では10コピー以上あり、癌化耐性をもたらしていることを発見した。
 これらの重複遺伝子の多くは偽遺伝子であると思われたが、そのうちLIF6はDNA damageによって活性化したp53に応答して発現し、apoptosisを誘導することで癌化耐性を与えていた。
 分子進化的な解析から、LIF6は偽遺伝子がp53の調節エレメントを獲得したことで再機能化した”ゾンビ遺伝子”であると考えられた。
 LIFのオルソログは象やマナティなどの近蹄類で複数コピー見られる。それらの多くは偽遺伝子であるが、LIF6の様に再度機能を獲得したゾンビ遺伝子が体サイズの増加と長寿の関係、すなわちcancer resistanceの増強の進化に寄与しているのかもしれないという進化生物学的にも細胞生物学的にも興奮するお仕事でした。

Vazquez J, Sulak M, Chigurupati S, Lynch V. A Zombie LIF Gene in Elephants Is Upregulated by TP53 to Induce Apoptosis in Response to DNA Damage. Cell Reports 2018; 24: 1765–76.
https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(18)31145-8

 

 最近、酵母でゲノム編集により染色体を一本に繋げても平気で生きているという論文が出て話題になったが、おそらく染色体が分割していることによる倍数体や遺伝子重複の生じやすさが適応度、すなわち進化に影響しているのではないかなと思った。

亀はいかにしてその性別を決めるか?

我々人間は受精するときに性染色体の配分で性別が決定するわけだが、ある種の生物は発生段階で環境要因によって性別が決まる。
例えば、カメの仲間は温度によって性別が変わる。
温度依存的な性決定には遺伝子発現のエピジェネティックな変化(DNA塩基配列の変化を伴わずに遺伝子の発現状態が変化すること)が関与するという報告があるが、詳しい分子メカニズムはわかっていなかった。

5月11日にScienceに発表された論文では、ヒストン脱メチル化酵素KDM6Bがエピジェネティックな変化を介してカメの性決定に寄与することを明らかにしている。
ヒストンというのは染色体上でゲノムDNAが巻きついてるタンパク質で、ヒストンがメチル化されていると遺伝子が不活性な状態となり、脱メチル化されると遺伝子発現が促進される。こういうのをエピジェネティックな修飾という。
(ちなみに哺乳類のメスにはX染色体が2つあるが、どっちも遺伝子が発現している訳ではなく片方は不活化されており、これもエピジェネティック制御の例と言える)

今回調べたミシシッピアカミミガメのタマゴでは、オスになる温度の26度では生殖腺でKDM6Bの発現が上昇しする。メスが生まれる32度では発現しない。
KDM6Bはヒストンの脱メチル化により、精巣の分化(オス化)に寄与するDMRT1の発現を促進する。
本来オスになる26度でも、KDM6Bを阻害するとメス化してしまう。
このようなエピジェネティック制御の仕組みは、爬虫類でタマゴを温める温度がどのように性別を決定するのかという、50年来のパズルをついに解き明かすだろう、と締めくくられている。

何に感銘を受けたかというとヒストンの修飾を見るクロマチン免疫沈降という難しいワザがあるのだが、それをカメの生殖腺でやっていたことだ。
分子生物学会で「非モデル生物の生物学」みたいなシンポがあったけど哺乳類ならヒトやマウス、昆虫ならショウジョウバエ、植物ならシロイヌナズナ、真菌なら酵母、細菌なら大腸菌といったモデル生物がいて、これらの研究によりこれまで分子生物学は発展してきた。
生態学の世界には色々とオモシロい生物や生命現象がたくさんあると思うが、モデル生物以外の生物ではせいぜい解剖学的な解析にとどまり、どのような遺伝子やタンパク質が機能しているかはあまり研究されてこなかった。
ところが次世代シーケンサーやらゲノム編集技術やらの発展により、今後は個々の生物の持つ特有のオモシロい生命現象について、分子レベルで解析が可能になっていくだろう。

 

Ge C, et al. The histone demethylase KDM6B regulates temperature-dependent sex determination in a turtle species. Science. 2018.

 

 

寓話としての短編カレー小説

 その日は一限から山の上で授業だった。私はいつものように山の麓にあるキャンパスまで自転車で行き、テニスコートの裏に自転車を停めて、そこからは歩いて山道を登った。 

 授業は午前中だけで、それも微睡みの中で滞りなく終わった。いざ帰らんと席を立とうとすると、学科における数少ない友人の一人が話しかけてきた。 

 「今さ、ものすごくカレーが食いたくないか」 

 私は彼の言動を不審に思い、とりあえず「別に」と答えた。話を聞くと、なんでも理学部キャンパスのレストランでカレー食べ放題というのがあるそうだ。しかもそれはちょうど本日までだという。 

 説明を受けるた私は、結局彼の申し出を承諾した。特にお腹がすいていたわけではなかったが、朝食がバターしょう油ご飯だけだったし、そもそも私はカレーという食べものが大好きなのだ。 

 


 理学部の食堂の二階で件のレストランはひっそりと営業していた。私は認識していなかったが以前から存在しているのだろう。階段のところに"あおしす"という文字が見えた。おそらく青葉山とオアシスをかけたこのレストランの名前であると思われる。この大学の施設はことごとく古くて汚らしいのだが、その店の内装はなかなかきれいで好感を持てた。食事をとる場所というのはこうでなくてはいけない。 

 店に入ると、我々は窓際の二人がけの席に案内された。ガラス越しに外の様子が見える。カフェテラスのパラソルが風にあおられて揺れていた。雲はなく良く晴れているが、そこで食事をとっているものは誰もいなかった。 

 カレーバイキングはミニサラダ、ドリンク一杯、ナン一枚がセットになっており、682円というシロモノだった。貧乏学生の昼食としてはやや豪華ではあるが、たまにはこういうのも悪くない。ドリンクが選べたので私はパインジュースを頼んだ。パインジュースは当たり外れの激しい地雷源ではあるが、非日常を感じたくてついギャンブルをしてしまった。運ばれてきた薄黄色の液体を口にすると、パイン飴を水に溶かしたような味がした。 

 バイキングはホテルの朝食におけるそれのように入り口付近から壁際に並べられている。カレーは四種類あり、日替わりで中身は異なるらしいが、その日はセイロンカレー、トマト風カレー、豆のカレー、ハヤシライスがあった。ハヤシライスはカレーではないのではないか、という疑問を封じ込めた私はとりあえずご飯と豆のカレーをよそり、トッピングをどっさりのせた。トッピングには福神漬け、ブロッコリー、トマトなどから、なんとコロッケまであり、これも取り放題であるから良心的である。友人はトマトカレーとハヤシライスをダブルでかけていた。二人して席に戻ると、さっそく食べ始めた。

 「しってるかい。カレーのスパイスってほとんど漢方薬なんだよ」 と、彼が言った。理学部の学生というのは知識を披露したがるのだ。

 「ああ、ターメリックはウコンのことだしね」 私は先日インターネットで仕入れた知識で応酬した。

 「内臓の調子がよくなるぜ」 

 「食えば食うほど腹が減る、という奴だ」 

    その時はまだよかった。 

 五分もすると私は一杯目をたいらげてしまった。見れば友人はルウだけ食べてライスはきれいに残してある。飯は食わずにルウだけお代わりしまくるつもりなのか。その計画性に戦い慣れたものの策略を感じ取った。我々は美味しさとか美しさよりも、いかにして元を取るかを考えてしまうのだ。

    私は元ミスターカレー好きとして彼には負けられないと思い、二杯目に取り掛かった。今度はセイロンカレーとハヤシライスにした。二杯目はまだ余裕である。三杯目に取り掛かると、遅れてナンとサラダがやってきた。ありがたい、サラダがちょうどいい口直しになる。ところが、ナンが思わぬ伏兵であることがわかった。何せ腹にたまる。こいつに胃のスペースをとられては後が続かない。 

 「水につけて流し込めばいんじゃないだろうか」 と、彼は言った。

 「ホットドックの早食いじゃないのだぞ」 

 「体格で劣る日本人が勝つにはそれしかないんだ」 

   ついに訳の分からぬことを言い始めた。欧米人と戦っているのだろうか。そもそも、味を犠牲にしてまでやる価値があるのか。 

 四杯目を食べる頃にはだいぶ腹がきつくなっていた。しかし我々は協議の末にまだやれると判断し、五杯目をよそりに行った。それはまさに戦いであった。胃のほうはすでに限界のサインを送ってきている。私のほうがやや早いペースでカレーは食べている。しかし私にはまだナンが半分以上残されていた。私は必死でご飯をたいらげ、ゴール間際のトライアスロン選手のような面持でナンをルウに浸した。 

 


 そのようにして我々の戦いは終わりを告げた。しかし我々を待っていたのは達成感でも満足感でもなく、疲労感だけだった。腹はパンパンにふくらみ、できればそのまま動かずにいたかったがそうもいかない。結局私はご飯約三杯とカレー五杯、サラダ一皿、コロッケ二枚、トマト一個分、ブロッコリー一株分、パインジュース一杯、水二杯を食べた。友人も似たようなものだった。胃の容積をオーバーしている気もするが、まあ気のせいだろう。

 我々は外に出て少し歩いた。胃は鉛のように重く、ともすれば野草に栄養を与えてしまう恐れがあった。野生動物は基本的に食べ過ぎるようなことはしない。食事の間は無防備であるし、食後は動きが緩慢になる。消化に要するエネルギーが割に合わない。我々は生物としての本能を失った人類の祖先に呪詛を送りながらため息をついた。

 「満足して帰りたかったら、最後の一杯が余計だった」 

 「やれやれ」 と私は言った。

 友人は原付なのでキャンパスの入り口で別れた。軽快に山道を降りていく彼の姿を見ながら、ふと、私はこの重たい腹を引きずって歩いて山を下らなければならないことに気づいた。 

 眼下の果てしなく続くような下り坂を眺めて、私はもう一度深い溜息をついた。

新装版ブラム学園!を買う

ブラム学園というのは弐瓶勉氏の伝説的SF漫画BLAME!の気が狂ったような(弐瓶先生どうしちゃったの⁈)番外編だが、私が手を出そうとした頃には紙のコミックはプレミアが付いており、Kindle版を持っているだけであった。

というわけで、予約していたブラム学園の新装版が届いた。

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表紙がなんか凄いことになっていて(消去法でシボとサナカンだとは分かるが…)、旧版の表紙に比べても狂気を感じる。

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しかし後書きを読むとこの表紙は本意ではなく、男2人が銃を持った絵にしようとしたところ編集にリジェクトされ、無理やりおっぱいを描くように言われたらしい。この後書きが非常に職業漫画家の悲哀が感じられてとても面白い。

新装版に追加された「つむぎ、『ブラム!』にハマる。の巻」は、初見であったが、劇場版BLAMEの原型的エピソードとかなんとかそういう事より、最近の柔らかい感じの絵柄が当時の重厚な塗りと書き込みに比して異色であった。

新装版のBLAME!と比べて薄いが、全編フルカラーなのでほぼ同価格でもお得感はある。並べてみるとヤバさが際立っており、なかなか迫力があるのでオススメである。

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