高等ムーミンをめぐる冒険

趣味は生物学とクラリネットです。つぶやき:https://twitter.com/NobuKoba1988 ほどこし: https://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/RXOIKJBR8G4Q?ref_=wl_share

わが社を志望する理由は何ですか?

御社!御社!御社!御社ぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!御社御社御社ぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!御社たんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
CMの御社たんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
上場決まって良かったね御社たん!あぁあああああ!かわいい!御社たん!かわいい!あっああぁああ!
新製品も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!ホームページなんて現実じゃない!!!!あ…CMもパンフレットもよく考えたら…
御 社 ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!東京ぁああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵の御社ちゃんが僕を見てる?
表紙絵の御社ちゃんが僕を見てるぞ!御社ちゃんが僕を見てるぞ!挿絵の御社ちゃんが僕を見てるぞ!!
ホームページの御社ちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕には御社ちゃんがいる!!やったよアステラス!!ひとりでできるもん!!!
あ、新製品の御社ちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあ第一三共ぁあ!!キ、キリンビール!!サントリーぁああああああ!!!ヤクルトぉおおお!!
ううっうぅうう!!俺の想いよ御社へ届け!!東京の御社へ届け!
 
修士の時にmixiの日記に書いたものです)

寓話としての短編クリスマス小説

 ドアを開けるとトナカイが立っていた。
「すみません、ちょっとお時間よろしいでしょうか」
 その日はクリスマスで、ちょうど彼女と一緒にチーズフォンデュを食べようとしていたところだった。
 もちろんよいわけなかったのだが、せっかく寒い中やってきたのに要件も聞かず追い返すのもどうかと思ったので話だけでも聞いてみることにした。まあいくらなんでもクリスマスの夜なんだからすぐに帰るだろう。
「どうも夜分にすみません。余りお時間はとらせませんので」
 謝るくらいならくらいなら初めから来ないでくれたらいいのにと思ったが、もちろん口には出さなかった。
 トナカイが差し出してきた名刺には『日本サンタクロース保護協会』と書かれていた。
 僕はこれはちょっと話が長くなるぞ、と警戒した。よく見てみるとトナカイは目は充血してるしなんだか煙草臭いし、歯もヤニで黄色く変色している。僕は安物の煙草の臭いというのが排気ガスより嫌いだった。だいたいこういう団体にはろくな奴がいない。
 しかし僕は優柔不断なので返答の仕方に迷っているうちに、トナカイは勝手に話を始めてしまった。
「ご存知のとおり、野生のサンタの数は非常に少なくなってきています。主な生息地であるフィンランドの森林が開発により年々面積を減らしておりますし、住処をなくすと同時に餌となる小動物も激減しています。最近ではこの時期になると若者たちによるサンタ狩りも後を絶ちません。まったくひどい話です」
「はあ」
 時間をとらせないといった割に話は結構長く、口調には熱がこもっていた。僕は適当に相槌を打ちながら聞き流していた。半分開いたドアから流れ込む冷気でひどく寒い。
 「であるからして、サンタがサンタらしく生きるためのPRを行っているわけですが、高度資本主義経済の中では神聖なクリスマスでさえ商業主義に堕していることは教皇陛下もお嘆きになっているわけで、西欧では家族と過ごすのが一般的なクリスマスが日本ではカップルのためのイベントとなり聖なる夜が性なる夜になってしまっていることはまったく残念なことで、我々はソフィスティケートされたクリスマス社会を目指し、いわばメタファーとしてのクリスマスを展開していくために日々努力しているわけなのです」
 寒さで理解能力が落ちたのか何を言っているかまったくわからない。いい加減疲れたので勇気を振り絞ってたずねてみた。
「それでいったい何の御用ですか」
 そこで僕はトナカイの左手に募金箱がぶら下がっていることに気付いた。
「お気持ちだけで結構ですから」
 僕は財布に残っていた千円札を一枚と小銭を全部入れた。正直一銭も渡したくなかったが、ひどく疲れていて判断力が鈍っていたし、なにしろみんなサンタのことが大好きなのであんまりケチケチしていると世間体が悪い。
 トナカイは礼を言って去っていった。去り際に『SAVE SANTA』と服に書かれたサンタクロースのマスコット(ひどい造型だった)がついた携帯ストラップをくれた。後には冷気と、煙草の臭いと、醜いストラップだけが残った。
 部屋に戻ると、チーズフォンデュは焦げ付き、フライドチキンは冷め、彼女はひどく立腹していた。彼女の機嫌を直すのに実に1時間以上を要さねばならなかった。もちろんその醜いストラップを見せても何の役にも立たなかった。
 結局その日彼女は帰ってしまい、僕は窓を開けて携帯ストラップを投げ捨てた。
 ストラップは信号待ちで止まっていた車のボンネットに当たって跳ね返った。
 僕は慌てて窓を閉めた。

 

(学部3年生の時にmixiの日記に書いたものです)

アクネ菌は実はいいやつ

アクネ菌(Cutibacterium acnes)というとニキビに悪そうなイメージであるが、誰にでも存在する皮膚常在菌であり、プロピオン酸や脂肪酸を産生して皮膚を弱酸性に保ったり、病原体に対するcolonization resistanceに寄与するという。今回は抗生物質を作って皮膚細菌叢の構成に寄与することが明らかとなった。

この論文では皮膚常在菌であるアクネ菌が産生するcutimycinという抗生物質を同定した。cutimycinは毛包内における細菌叢を変化させ、ブドウ球菌(S. epidermidis)の定着を減らすらしい。これがいいのか悪いのかはさておき、正常な皮膚細菌叢の維持に関与しているのだろう。

細菌などを含む毛包内容物を採取するのにビオレの角栓除去シートを使っていて少し笑った(写真もあります)。

A Cutibacterium acnes antibiotic modulates human skin microbiota composition in hair follicles | Science Translational Medicine

Science Translational Medicine  18 Nov 2020:
Vol. 12, Issue 570, eaay5445

おめぇ、……実験、論文、…そしてプレゼン、…全て三拍子揃ってるぜ

「おめぇ、……実験、論文、…そしてプレゼン、…全て三拍子揃ってるぜ。 ……お前みたいなヤツが俺の役をやるべきなんだよ…。アカデミアみてぇなクソ業界の教員をな…!」

「ははん。ごめんだね、あんたらみたいな根暗そうな地方国立大学の教員なんて!」

魅音が笑い捨てる。

小此木もそれを笑って受けた。

謙遜でなく、それは純粋な反応だと思った。

「……へへへ、そうだな。お前ほどの器なら日本の任期付特任助教なんてもったいないぜ…。 NIHでもパスツールでもワイツマンでも、…どこでも最高の人材になれるだろうぜ。何しろ、」

「はははは、あっははははははは!!! NIHぃ? パスツールぅ? 下らないねぇ! そんな退屈なところじゃあ、私を飼いならせやしないよ!!」

「……へっへへははははは! そうだろうな。そうだろうよ。 ……なら聞かせてくれ。お前ほどのヤツなら、何処の教員を望む!」

「教員なんて興味ないね。部長でいいね。」

「……部長…。国立感染症研究所辺りってとこか、…ふ、妥当だな。」

「だめだめだめ、なってないね! あのねぇ、私がやりたい部長はたったひとつ!! 雛見沢帝国大学の生物部の部長だけさッ!! 罰ゲームのない研究なんてごめんだね! 口先の魔術師、前原圭一! かぁいいモードの竜宮レナ! 萌え落としの梨花ちゃん!! そして期待の新人古手羽入!! あと沙都子!! これだけ揃ってりゃ、世界のどこだろうと退屈だねッ!!」

…………勝てねぇ……勝てねぇよ……こんなヤツがポスドクだったんじゃ、勝てるわきゃねぇやな。へへへへはははははははは!!」

SARS-CoV-2は胚中心反応を回避する?

8/19でCellのオンライン版にpre-proofで出ていた論文によると、原理はよく分からないが、SARS-CoV-2に感染しても濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)の分化が起きず、胚中心が形成されないらしい。
これにより記憶B細胞と高親和性抗体が生じにくい。
一方でTh1は増加し、二次リンパ組織におけるTNF-αの異常産生を引き起こす。マウスにおいてTnf-αはサイトカインストームと関連しており、筆者らはこれがウイルス感染でサイトカインストームを生じさせるメカニズムではないかと推測している。
この論文が正しいとすると、単に感染しただけでSARS-CoV-2に対する効果的な免疫を得るのは難しいかもしれない。
ノーガード戦法で集団免疫を得ようという国もあった気がするが、どうなのだろう?
Loss of Bcl-6-expressing T follicular helper cells and germinal centers in COVID-19
⭐︎用語説明コーナー⭐︎
胚中心:二次リンパ組織において免疫応答の際に形成され、濾胞性ヘルパーT細胞と胚中心B細胞の相互作用により、高い親和性を持つ抗体を産生するB細胞が選択される。要は抗体の産生に大事。
Th1:ヘルパーT細胞の一つ。炎症やら細胞性免疫に大事。
TNF-α :日本語だと腫瘍壊死因子。免疫に大事。

葉っぱの細菌叢と炎症性腸疾患

植物だと根っこで微生物と共生しているイメージですが、葉も主要な部位らしく、dysbiosisを起こすような変異体(自然免疫や小胞輸送の多重欠損)を作ると葉っぱで損傷が起きるそうです。

興味深いのはFirmicutesの減少とProteobacteriaの増加といったヒト炎症性腸疾患(IBD)と同様の変化が界を超えて(cross-kingdom)植物でも起きるところ。

自然免疫系の類似?


A plant genetic network for preventing dysbiosis in the phyllosphere
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2185-0

カメの温度依存的性決定(続報)

Trachemys scripta elegans (ミシシッピアカミミガメ。線虫ではない)は温度によって性決定する(26℃で雄:男性のマーク:、31℃で雌:女性のマーク:)ことが知られており、筆者たちは以前histone demethylase KDM6Bが温度依存的(26℃)に性線に発現して雄性決定遺伝子Dmrt1のクロマチンモデリングによって性別を雄:男性のマーク:に決定することをScienceに報告していました。今回彼らはこの研究をさらに発展させ、31℃ではCa2+濃度依存的にSTAT3がリン酸化し、pSTAT3がKDM6Bの発現を抑制することで雌:女性のマーク:に性決定することを見出しました。おそらく温度感受性チャネルか何かが重要だと考えられますが、そこまでは同定してません。また、STAT3はCold-inducible RNA-binding protein (CIRBP) によって活性化することが報告されており、CIRBPの関与も推察されます。いずれにせよ、温度による性決定にSTAT3が重要な役割を果たすことを示しています。
相変わらずカメでChIPしたりレンチウイルスを導入したり、非モデル生物の分子生物学的アプローチに夢を感じました。
https://science.sciencemag.org/content/368/6488/303