蝶々とかタニシなど一部の生物の精子には無核精子という核がない精子が作られ、自身は受精能力はないけれども有核精子の受精に必須です。しかしその理由は不明でした。
筆者たちはこの無核精子の分化に必須の遺伝子として、ハエでは性決定のマスター遺伝子であるSex-lethal (Sxl)を同定し、Sxl変異体では無核精子の形成異常が起きました。さらに、Sxl変異カイコは有核精子自体は正常であるのにメス体内での移動がおかしくなって不妊になりました。
つまり、無核精子の機能として、有核精子の正常な遊走に寄与することが明らかになりました。
なお、かの手塚治虫はタニシの無核精子の研究で医学博士を取っているそうです。
Sakai, H. et al. Dimorphic sperm formation by Sex-lethal.Proc National Acad Sci 116, 201820101 (2019).
https://www.pnas.org/content/116/21/10412
