高等ムーミンをめぐる冒険

趣味は生物学とクラリネットです。つぶやき:https://twitter.com/NobuKoba1988 ほどこし: https://www.amazon.jp/hz/wishlist/ls/RXOIKJBR8G4Q?ref_=wl_share

2019-01-01から1年間の記事一覧

免疫老化は野生動物の死を予測する

免疫老化は衛生的な近代人や実験動物で研究がなされてきたが、常に感染の危険に曝される自然状態ではどのような意義を持つのだろうか? ということで筆者たちは野生のヒツジを26年間にわたって継時的に調査した。 頭数は800頭、血清サンプルは2000に及ぶ。 …

腸内細菌と自己免疫疾患(APS編)

近頃、腸内細菌(腸管免疫)と自己免疫疾患に関する総説を書いていたので細菌と宿主の分子相同性とかに興味がある。 この論文では腸内細菌と自己免疫疾患の関係を調べるためのモデルとして、抗リン脂質抗体症候群(APS)をチョイス。 自己抗体のエピトープと…

エプスタイン・バール・ウイルスと多発性硬化症

Multiple sclerosis (MS)の患者からAnoctamin 2 (Ca2+-activated Cl− channel, CNSに発現)に対する自己抗体が検出されるらしいのですが、Epstein-Barr virus(EBV、成人はほぼ全員感染、腫瘍や自己免疫疾患に関係)のEBV nuclear antigen 1 (EBNA1)との間…

え!!ヒドラでシングルセルを!?

できらぁ! 高い再生能力を持ち発生のモデル生物としても用いられるヒドラは、三つの幹細胞集団から全身の細胞を分化させる。 この論文ではヒドラの細胞をsingle cell RNA-seqによって解析し、全細胞系譜、三つの系譜における遺伝子発現、新たなマーカー遺伝…

菌と筋肉

無菌マウスではSPFマウスに比べて骨格筋が少ないことが判明。 糞便移植で筋量は回復し腸内細菌代謝物であるSCFAの投与でも部分的に回復する。 神経筋接合部の形成・機能に関わる遺伝子発現が落ちているらしく、SCFAを介したシグナルが関与か? Lahiri, S. et…

オルガノイドを用いたクリプトスポリジウム原虫の完全な生活環の構築

特定病原体であるクリプトスポリジウム原虫の完全な生活環を単層培養した腸管organoid上でin vitroで構築し、さらにCRISPRで遺伝子操作も可能にしたという論文。 原虫業界のことは良く分かりませんが、面白いのが単層培養で、transwellにfeeder細胞としてNIH…

マクロファージのネクロプトーシスと関節リウマチ

マクロファージでA20をKOすると関節リウマチになるのですが、それはA20は普段MΦのネクロトーシスを抑制しているからというお話。 A20がないとデスレセプターやTLRのシグナルにより炎症が生じますが、意外にもリウマチ発症にNFκB経路の寄与は少なく、インフラ…

ウミウシの毒素はどこからくる?

ハワイの毒ウミウシの毒素は海藻由来で、さらその海藻の毒素は細菌由来であるという3種間の化学的相互作用をメタゲノム解析とかで明らかにした非常に面白そうな論文ですが難しすぎて読めないので誰か教えてください Zan, J. et al. A microbial factory for …

B細胞とT細胞の性質を併せ持つ細胞

リンパ球にT細胞(TCRを発現する)とB細胞(BCRを発現する)がいるのはご存知だと思います。 このパラダイムを覆すとして免疫学的には大ニュースなのですが、TCRとBCRを両方発現するどっちともつかない細胞(Dual expressers: DEs)が1型糖尿病患者で見つか…

核を持たない精子の機能

蝶々とかタニシなど一部の生物の精子には無核精子という核がない精子が作られ、自身は受精能力はないけれども有核精子の受精に必須です。しかしその理由は不明でした。 筆者たちはこの無核精子の分化に必須の遺伝子として、ハエでは性決定のマスター遺伝子で…

細胞は頭を使って動く

細胞遊走について核が先頭にきている絵を見ると思いますが、樹状細胞(DC)は核と微小管を機械的な測定装置のように用いて目の前にあるいくつかの孔を試し、より抵抗が少ない方を選んで進むとのこと。 これはT cellや好中球でも普遍的だったそうで、核が前に…

超解像顕微鏡が明らかにするリポソーム輸送の挙動

小胞やオルガネラなどの細胞内輸送はアクチン骨格の3次元構造とmyosin Va分子モーターによって駆動される。 筆者らはstochasticoptical reconstruction microscopy (STORM)というなんかカッコいい超解像顕微鏡を駆使し、myosin Vaによるリポソーム輸送の挙動…

再生時の幹細胞

腸管上皮幹細胞であるcrypt base columnar cell (CBC,いわゆるLgr5+幹細胞)を障害で喪失しても上皮が再生する事から、クリプト底部から+4の細胞(reserve stem cell: RSC)がCBCにリプログラミングされると言われていましたが、その後の研究でRSCは損傷修復…

トロンビンの意外な機能

IL-1αとβはそれぞれカルパインとカスパーゼという異なる酵素に切断されて活性型に変化するが、IL-1αはトロンビンによっても切断されるというimmunityの論文。 IL-1αの切断配列をアミノ酸置換したマウスでは、創傷治癒と血小板新生が不全となる。 トロンビン…

マラリアは蚊に迷惑をかけない

マラリア原虫は宿主である蚊のメスが血を吸って卵を作り始める(哺乳類に感染できるようになる)とステロイドホルモンを感知し、蚊の脂質を利用して増殖を始めるが、それは蚊の卵形成に対しては競合的ではない。普段は増殖しないで大人しくしており、マラリ…

ゲイ遺伝子はない

Scienceに載っていた50万人くらいのゲノム(英国白人中心)を大規模に調べた論文によると、同性愛行動に相関する5つの遺伝子多型が同定された。そのうちあるSNPは嗅覚遺伝子の近傍にあり、別のSNPは男性型脱毛に関係することから、フェロモンとかホルモンが…