高等ムーミンをめぐる冒険

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腸内細菌と自己免疫疾患(APS編)

近頃、腸内細菌(腸管免疫)と自己免疫疾患に関する総説を書いていたので細菌と宿主の分子相同性とかに興味がある。

 

この論文では腸内細菌と自己免疫疾患の関係を調べるためのモデルとして、抗リン脂質抗体症候群APS)をチョイス。

自己抗体のエピトープとの分子相同性からグラム陽性酪酸産生菌Roseburia intestinalis(この菌のDNAメチルトランスフェラーゼの予測抗原部位と配列が一致。構造生物学って偉大ですね)に当たりをつけて、患者の糞便をIgA-seqしたらやっぱりR. intが健常人より多量にくっ付いていた。

R. intをマウスに経口免疫すると、ヒトのβ2-glycoprotein I(自己抗体の標的)に交差する抗体が誘導されるとともに、APSの病態である血栓を発症。

綺麗に菌の投与で自己免疫疾患を再現していてすごいですが、総説書いてる最中に出てくれてればなお良かったです。

なおR. intはヒトの常在菌ですがAPSの発症にはHLAの多型が関与しているらしい。

Ruff, W. et al. Pathogenic Autoreactive T and B Cells Cross-React with Mimotopes Expressed by a Common Human Gut Commensal to Trigger Autoimmunity. Cell Host Microbe 26, 100–113.e8 (2019).
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1931312819302483?via%3Dihub